壁土の材料
壁土の採取と製造の現状
 香川県には壁土に適した「はがね土」と呼ばれる良質な粘土層が広く存在します。昔から壁土には田圃の底土から採取された粘土が良いとされていましたが、今はそれに応じる農家はほとんどありません。現在は丘陵地などの粘土層が採取地となっています。
 荒壁土は香川では「ベタ」「ドロ」などと呼ばれ、専門業者によって製造・販売されています。壁土の需要は阪神・淡路大震災以後、建物の軽量化が進み急激に減少しました。そのため業者の廃業が増え、現在は県下に5〜6社が営業しているに過ぎません。
 壁土製造には土のストック、配合のために広い場所と専用の設備が必要であり、需要減に加えて原材料の藁の供給が困難になっていることなど、新しい業者が生まれる可能性は低く、後継者不在も心配されています。
▲ 粘土
▲ 花崗土(真砂土)
▲ 藁
▲ 中塗土
▲ 練り置き土
粘土と花崗土(真砂土)
 粘土は極めて小さい粒子(粒径5μm以下)を多く含む土です。水を含んだ粘土は可塑性に富み、乾燥により収縮硬化します。荒壁土には粘土と花崗土が使われます。粘性の高い粘土は硬化後の強度が高い代わりに乾燥収縮が大きく、施工性も良くない(鏝離れが悪い)ため花崗土を混ぜて調整します。花崗土は花崗岩が風化してできた土で関西以西の山間部に多く見られます。砂に比べ粒度のバランスが良いところが壁土に適しています。 配合は粘土の粘性により違いますが、荒壁土の場合、おおむね粘土6〜7に対して花崗土4〜3程度が目安とされているようです。
藁(わら)
 藁は壁土の乾燥収縮(ひび割れ)を防止する目的で混入されます。配合は壁土製造者が土の状態を見ながら決めています。
 壁土業者が最も苦労するのが藁の調達です。壁土用には乾燥した長い藁が必要ですが、今の農家は稲刈りにコンバインを使うために長い藁が手に入りません。地元の農家と契約を結んだり、農協に頼んで稲藁を集めてもらったりしています。古畳の藁床を再利用したものも使われています。
中塗土(おろし土)
 中塗土は荒壁土と違い袋詰めの状態で市販されています。生産地は主に関西で、産地によりそれぞれ違う名称(梨目土など)が付いています。
 香川では県内の土管や煉瓦の製造会社が生産する「おろし土」と呼ばれる粒の細かい乾燥粘土(篩目1㎜程度)が多く使われています。中塗はこれに砂とスサ、水を加えて行います。配合の目安は砂6〜7に対しておろし土4〜3程度が多いようです。スサは壁の亀裂防止のために混入します。材料は繊維化した藁や麻などが一般的です。
竹と藁について
間渡し竹
▲ 割竹
▲ 間渡し竹
▲ 藁縄
▲ 棕櫚縄
▲ 麻縄
香川では、間渡し竹に真直ぐで肉厚があり、節の間隔が長い丸竹(通称・女竹)が使われています。割竹を間渡し竹として使う習慣はなく、古い建物にもそうした例は見当たらないようです。昔は地元や種子島産の女竹が使われていましたが、現在は中国から輸入しています。中国産の女竹は切り旬を守って秋に伐採し、半年ほど乾燥させてから日本に届きます。元口直径は12〜15㎜、長さはコンテナ輸送の都合で3m弱に統一されています。
割竹
割竹には直径4㎝〜6㎝程度の真竹や淡竹(はちく)が使われています。これを竹割機で幅7分(21㎜)程度に割り、節の部分を削り落してから使います。真竹や淡竹は四国各地に生育しています。現在は主に徳島県の吉野川流域や愛媛県などから入手しているようです。
 小舞を編む縄には太さ4㎜程度の藁縄や棕櫚縄(しゅろなわ)、麻縄などが用いられています。以前は地元産の藁縄が使われていましたが安価なビニール紐が普及して需要が減り地元では生産を止めてしまいました。そのため棕櫚や麻、ビニールが多く使われるようになりました。
藁縄は現在、新潟・秋田方面から入手しているようです。
竹材店の役割
 壁土の下地に使われる竹や縄は全て竹材店が扱っています。竹材店は材料の販売だけでなく、小舞職人の手配まで行うなど、土壁製作の重要な役割を担っています。
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