「耐力壁」としての土壁をつくる

土壁の壁倍率は、平成15年12月の建築基準法告示改正により、従来の0.5に加えて新たに1.0と1.5が定められました。これは、地域の土壁が従来のつくりかたのままで壁倍率1.0もしくは1.5を有する耐力壁と認められたわけではありません。
壁倍率1.0と1.5の「耐力壁」としての土壁には、その耐力を担保するための仕様規定があります。仕様規定を守ることで始めて、壁倍率1.0もしくは1.5の「耐力壁」として認められるのです。

しかし、土壁の材料が自然材料でありその入手経路も多様であるため使用可能なものを特定し網羅することが困難であること、生産工程が全国一律ではないため品質管理の内容が異なること(香川県では壁土を安定的に供給する壁土製造業者が存在する)、土壁は土や竹など複数の材料が互いに関係し合って耐力を生み出す耐力壁ですが審査の現場では仕様に記された数値のみを確認するという手法しか持たないことなど、建築基準法告示に示された仕様規定の運用は大きな問題となっています。
このような問題を解決するためには、告示に示された例示仕様を基準として、地域ごとにその地域でつくることができる土壁仕様の性能が告示に示された例示仕様同等以上であることを示す必要があります。

土壁ネットワークは、このような土壁に関する告示運用の問題を解決するため、香川県内の壁土の性能検証とその品質を安定させるための研究活動を行っています。
この研究報告が、これから同様の研究や実務に取り組まれる方々、および、既に研究を行っている方々のお役に立てることができればとおもいます。


告示の運用について(審査機関等に向けて)

「耐力壁」としての土壁の使用においては、告示に示された仕様規定を守らなければなりませんが、土壁の材料は自然材料であり、地域によって材料入手方法や施工体制も異なるため、告示仕様に示された数値のみに拘り厳密に運用してしまうと実質的な禁止になりかねません。また土壁については、耐力メカニズムの解明が始まったばかりであるという認識も必要です。
土壁の壁倍率についての告示改正の目的は長寿命木造住宅の推進です。告示仕様を地域の状況に応じた形で適切に使いこなすことができなければ、その目的達成から遠のくばかりでなく、急激に減少しつつある土壁にかかわる産業の崩壊を食い止めることもできません。
告示の運用において審査機関は、地域の生産体制を十分に確認した上で、性能比較試験等により検証された地域の仕様が告示の例示仕様と同等性能であるかどうかを適切かつ早急に判断することが求められます。
また、性能比較試験などの検証の実施にあたって国や自治体、業界関係団体などは、地域で活動するグループなどが取り組みやすくするよう適切な支援をおこなうことが必要です。

「耐力壁」としての土壁の品質確保について(実務者に向けて)

土壁を壁倍率1.0と1.5で用いる際には「耐力壁」をつくるという認識をもって、材料や工程に注意しなければなりません。
土壁は地域ごとに材料や生産体制が異なるものです。そのため、告示に示された例示仕様を基準として、地域ごとに材料や生産体制の検証とともに性能確保に向けた取り組みが必要になります。


<土壁ネットワーク発足の経緯>
土壁の壁倍率は平成15年12月の建築基準法告示改正により従来の0.5に加えて新たに1.0と1.5が定められました。 しかし、告示で示された仕様規定の内容を厳密に運用する審査機関と現場との間でトラブルが多く発生し、香川県内ではこの壁倍率が使用できない状況がつづいています。
この問題解決にあたり、現場が対応可能な仕様が告示に示された例示仕様と等以上であることの証明試験を行うと同時に、技術者の職場環境や施工価格、後継の問題など土壁の存続に関わる様々な課題についても検討を行うことになり、2006年4月、左官、大工、土壁材料業者、建材メーカー、設計者、研究者などが集まった任意団体として土壁ネットワークが発足しました。

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