土壁ネットワーク 土壁実大面内せん断試験 告示型・地域型仕様の違いによる比較

土壁ネットワーク 土壁実大面内せん断試験 告示型・地域型仕様の違いによる比較

試験の概要について

 

 

T 告示型・地域型仕様の違いによる比較

 

 

 

 

 

試験の目的

 

 

 

目的1: 香川県の平均的な壁土により製作された土壁の耐力を検証する。
目的2: 竹小舞について、告示に示された仕様と地域で多く使われる一般的な仕様の違いが耐力に及ぼす影響を検証する。
目的3: 地域の伝統的な建物で多く使われる柱間=3尺の土壁の耐力を比較する。

 

 

 

 

試験体寸法

 

 

試験体A、B: 技術解説書に示された寸法による。
試験体C: 階高=3000mm、間口=1910mm(四国間)、柱間=955mm
[試験体数]
各試験体×3体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<試験体の仕様>

 

 

 

 

 

 

 

<竹小舞の仕様について 告示と地域の違い>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験結果

 

 

1間巾の壁の破壊挙動(試験体A、B)
「1/300radまで」
○チリ周りで壁土と軸組との隙間(剥離)が確認された。(写真1)
○隙間が生じた反対側(隅角部)では、軸組が土壁を圧縮し、土壁がその圧縮力によって柱内面から柱間中心に向かって破壊が進行していく。(写真2)(技術解説書「@土壁隅角部の圧縮抵抗」参照)
○その後、隅角部の土壁は厚み方向に膨らんでいく。(写真3)

 

「1/150?1/100rad」
○荒壁面の縦間渡し竹が、柱側から中心に向かってひび割れが生じ(写真4)、縦貫のひび割れとなった。(写真5)
○その後、頭貫、地貫の水平貫に沿ってひび割れが生じた。(写真6)(技術解説書「A貫のこじり抵抗」参照)
○1/100radまでに、せん断ひび割れが中塗り面の中央から発生していった。(写真7)

 

「1/75rad」
○中塗り面は小舞から剥離が生じた。

 

「1/50rad」
○剥落が生じた。(写真8)
○壁体内部では、間渡し竹が軸組内部に差し込まれているため、土壁と軸組がずれることにより、軸組に差し込まれた間渡し竹がダボ的に抵抗している。(写真9)(技術解説書「B土壁と軸組間での間渡しのダボ的抵抗」参照)
○軸組仕口のモーメントによる抵抗、込み栓のせん断抵抗も確認された。(写真10)(技術解説書「C軸組仕口のモーメント抵抗」参照)

 

 

写真1 土台-土壁の隙間(試験体A-1)写真2 圧縮抵抗によるひび割れ(試験体A-1)

 

 

写真3 厚み方向の膨らみ(試験体B-3)写真4 間渡し竹に沿ったひび割れ(試験体 A-1)

 

 

 

写真5 縦貫に沿ったひび割れ(試験体 B-2)

 

写真6 水平貫に沿ったひび割れ(試験体B-1)

 

 

 

写真7 中塗り面のせん断ひび割れ(試験体B-2)

 

写真8 中塗り剥落直前(試験体B-2)

 

 

 

 

写真9 ダボ的抵抗(試験体B-3)写真10 込み栓せん断抵抗(試験体B-2)

 

 

 

割竹の間隔がおよぼす影響

 

 

○間渡し竹間に割竹が7本の「試験体A」と間渡し竹間に割竹が5本の「試験体B」を比較すると、両試験体とも類似した曲線図( 図2.1「荷重P-真のせん断変形角曲線」)を描いているが、降伏耐力Py( 表2.1「壁倍率算定表」)は「試験体B」の方が0.86倍と低くなっている。しかし、初期剛性は「試験体B」の方が高く、1/150rad時には耐力が1.57倍となった。このことから割竹の間隔は、土壁の接着面に影響し、強度にも関わってくることがうかがえる。

 

 

 

3尺壁との比較/軸組寸法の影響

 

 

○柱間3尺+3尺の軸組「試験体C」と、一間の軸組「試験体B」の比較では、初期剛性と(吸収エネルギー量を示す)面積の差は大きく、「試験体C」は「試験体B」より1.83倍の面積を得た。
○しかし「試験体C」は初期剛性が低く、1/150rad時の耐力は「試験体B」の0.61倍となった。

 

 

 

 

 

3尺壁との比較/破壊挙動

 

 

○破壊形式は、中塗り面のせん断破壊が先行する破壊(試験体A・B)と先行しない破壊(試験体C)となった。
壁土に作用するせん断応力度は、壁中央部で最大となる分布を示し、壁中央のせん断応力度が、その部分の壁土のせん断強度を上回ると壁土はせん断破壊する。「試験体C」の場合は半間となるため、土壁隅角部圧縮力による抵抗と貫のこじりによる抵抗に比べ、壁土のせん断耐力は高く土壁はせん断破壊をしない。壁長が1間の「試験体A、B」では、壁中央のせん断応力度は壁長の2乗にほぼ比例するため、壁中央のせん断応力度が壁土のせん断強度を上回り、せん断ひび割れが生じる。(技術解説書より)

 

○「試験体A、B」では、小舞間隔の違いによる土壁の破壊進行に大きな差は見られなかった。最終引き込み時には、荒壁側では間渡し竹や水平貫・縦貫にひび割れがあり(写真1)、隅角部は圧壊して一部が剥がれ(写真2)、中塗側ではせん断亀裂が生じて剥がれ落ちた(写真3)。
○「試験体C」については、破壊が進行していく様子は同じだがせん断破壊は変形角が大きくならないと現れなかった。そのため「試験体A、B」ほど土壁が剥がれ落ちることもなかった(写真4)。
○地域型の「試験体C」は、最大荷重到達後も荷重は低下しにくく、せん断破壊も先行しないことが確認できた。せん断破壊の発生の有無により変形性状は大きく変化するものと考えられる。

 

 

 

 

写真1 縦貫・間渡し竹のひび割れ写真2 柱-土台隅角部の圧縮

 

 

 

写真3 試験体A、Bせん断破壊

 

写真4 試験体Cせん断亀裂

 

 

 

 

 

 

 

● 間渡し竹および竹小舞の告示仕様との違いが破壊性状に及ぼす影響の差は見られなかった。
●施工面では、割竹間隔の狭い(タテ1・7・7・1本)試験体Aは、地域型の割竹間隔(タテ1・5・5・1本)試験体B、Cに比べて1.5倍の施工手間を必要として、材料歩留まりも良くない。
● 3尺+3尺壁(試験体C)は、吸収エネルギー面積で1間壁(試験体A、B)の1.9倍と耐震性に優れている。
● 3尺+3尺壁(試験体C)は、壁面が柱で分割されることにより、土壁隅角部圧縮力による抵抗と貫のこじりによる抵抗が土壁面のせん断強度を上回るため、せん断破壊が先行しない。
● 初期剛性、最大耐力、最大耐力となる変位は、1間壁(試験体A、B)が優れている。
● 壁倍率決定要因は、試験体A、Bが「構造特性係数」で、試験体Cは「1/150rad時の耐力」であった。

 

 

 

〈荷重P-真のせん断変形角曲線〉

 

 

 

 

 

 

〈壁倍率算定表〉

 

 

 

 

 

 

 

 

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