土壁ネットワーク 耐力壁としての土壁とは

土壁ネットワーク 耐力壁としての土壁とは

土壁を耐力壁として考える

 

 

 

●木造住宅の耐震(耐風)設計

 

 

 

 

 木造住宅の耐震・耐風性能を判断する方法は二つあります。一つは構造計算によるもので、これには許容応力度計算、保有耐力計算、限界耐力計算など幾つかの計算法があります。もう一つは壁量計算と呼ばれる簡易計算法で、次項で説明する耐力壁や壁倍率という考え方を用いて行います。木造住宅の多くは壁量計算によって設計されています。
 壁量計算とは、建物の階数(平屋か二階建)と面積に応じてあらかじめ定められた耐力壁の長さの総計(必要壁量)を、その建物の耐力壁の長さの総計(存在壁量)が満たしているかどうかをチェックするものです。

 

 

 

 

●耐力壁と壁倍率

 

 

 

 

 木造軸組は一般的に接合部が弱く、地震や台風によって横方向から強い力を受けると容易に変形してしまいます。変形が進むと接合部はやがて破壊し、建物は倒壊します。これを防ぐには、軸組みに筋かいのような斜材や合板などの面材を加えて耐力を高め、変形を妨げる必要があります。このようにして耐力を高めた壁(軸組を含む)を耐力壁と呼びます。
耐力壁の強さは壁倍率として表されます。壁倍率は、足元を固定した長さ1メートルの壁の頂部に200kgの水平力が働いたときの水平変形量(層間変位角)が高さの1/120である場合を1とし、その倍数で表します。
壁倍率は耐力壁の種類別に法律で定められています。例えば、30mm×90mmの木材を使った筋かいを入れた壁の壁倍率は1.5、厚さ7.5mm以上の構造用合板を貼った壁の壁倍率は2.5です。壁倍率の大きい耐力壁を使うほど耐力壁を少なく設計することができます。

 

 

 

<参考資料>
昭和56年6月1日 建設省告示第1100号
建築基準法施行令第46条第4項表1(一)項から(七)項までに掲げる軸組と同等以上の耐力を有する軸組及び当該軸組に係る倍率の数値を定める件
(平成15年12月9日 国土交通省告示第1543号による改正)

 

 

 

 

●土壁の壁倍率

 

 

 

 土壁の壁倍率は、長い間0.5という低い数値に抑えられていましたが、平成15年の告示改正により新たに1.0及び1.5の壁倍率が追加されました。この改正によって、土壁を耐力壁として木造住宅を設計することが可能になりました。しかし、告示の仕様規定と地域の材料・工法との調整が難しく、せっかくの告示改正が活かされずにいます。また、現場にはまだ土壁を耐力壁として考える意識は薄く、その抵抗の仕組みも理解されているとは言えません。行政と現場の双方に問題が残されています。
<参考>
告示型試験体で確認された施工などにおける問題点 

 

 

 

土壁の抵抗の仕組み

 

 

 

●土壁の抵抗の仕組み

 

 

 

 

 平成16年に発行された土壁に関する技術解説書(※1)は、水平力を受けた土壁の抵抗の仕組みを以下のように説明しています。

 

1. 土壁隅角部圧縮力による抵抗(解説と写真)
2. 貫の「こじり」による抵抗(解説と写真)
3. 土壁と軸組間での間渡しのダボ的抵抗(解説と写真)
4. 軸組仕口のモーメント抵抗(解説と写真)
5. 壁土のせん断力による抵抗(解説と写真)

 

 土壁の耐力はこれらの抵抗力を合わせたものと考えられますが、土壁の長さによって各抵抗力の割合は異なります。壁長が短い場合(半間)は主に1から4つの抵抗力が働き、長い場合(1間)には5の割合が高くなる傾向が見られます。
 壁長は抵抗の性質にも影響を与えます。1間巾の壁と半間+半間巾の壁は、同じ壁倍率で評価されていますが、実大試験を行ってみると初期剛性と最大耐力は1間壁の方が高く、地震エネルギー吸収能力は半間+半間壁が高いことが分かります。

 

<参考>
告示型・地域型仕様の違いによる比較

 

※1「土塗壁・面格子壁・落とし込み板壁の壁倍率に係る技術解説書」(財)日本住宅・木材技術センター発行

 

 

 

 

 

●抵抗力の負担割合

 

 

 軸組と貫、竹小舞、壁土は一体となって耐力壁を構成し外力に抵抗しますが、その中で壁土が関係する抵抗力の割合は全体の約9割にも及びます。これは土壁の耐力が壁土の圧縮強度に大きく左右されることを示しています。

 

 

 

壁土の圧縮強度

 

 

 

 土壁の耐力の主な要因となる壁土の圧縮強度は、土の粒度(細かさ)とその分布状態に影響されます。粘土やシルトのような微粒分を多く含む土は、水を加えると粒子間に強い凝縮力が働き、流動状態では粘性(粘っこさ)を示し、乾燥すると硬度と強度が高くなる性質があります。香川県の壁土の粒度分布は壁土として評価の高い京都産の土に近い数値を示し、壁土に適していると思われます。しかし、圧縮強度は混入される藁の材質や配合量にも影響を受けるため、実際に使用する土は試験により圧縮強度を確認しておくことが望まれます。技術解説書(※1)が求める荒壁土、中塗土の強度を下表に示します。香川県では、四国職業能力開発大学校が壁土の圧縮強度試験を受け付けています。

 

 

<参考>香川県における壁土の実態調査

 

 

 

※1「土塗壁・面格子壁・落とし込み板壁の壁倍率に係る技術解説書」(財)日本住宅・木材技術センター発行

 

 

 

 

 

 

 

<参考>壁土の圧縮強度

 

 

壁土の圧縮強度は、「土塗壁・面格子壁・落とし込み板壁の壁倍率に係る技術解説書/(財)日本住宅・木材技術センター」(25p)で、標準試験方法は確立されていないが、同解説書により例示する試験方法または同等の試験方法により、右の表の数値を満足するものと記述している。

 

 

 

 

(参考〉
一般に使われているコンクリートの圧縮強度210kg/cm2は約「21N/mm2」で、荒壁に求められる圧縮強度「0.30N/mm2」の約70倍に相当する。

 

 

 

 

 

 

 

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